大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第一小法廷 昭和38年(オ)1319号 判決 1966年6月02日

上告人

佐々木末蔵

右訴訟代理人

高橋万五郎

被上告人

田名部善之亟

右訴訟代理人

神谷春雄

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人高橋万五郎の上告理由第一について。

所論は、訴外上村吉三郎および被上告人は、上告人より訴外上村菊次郎に対する本件土地の所有権移転登記手続請求事件(青森地方裁判所八戸支部昭和二九年(ワ)第一七三号)の上告人勝訴の確定判決の口頭弁論終結後の承継人にあたるのに、原判決が右承継人にはあたらないとして、被上告人の上告人に対する本件土地の所有権移転義務ないし所有権移転登記義務を否定したのは、民訴法二〇一条一項の解釈適用を誤つた違法があるというのである。しかし、この点に関する原判決の判断は、正当であり、原判決が本件はひつきよう不動産の二重売買に基づく紛争に外ならず、上告人と訴外上村吉三郎ひいては被上告人とのいずれがその所有権取得を相手方に対抗できるかは登記の先後によつて決すべきであるとした判断は、すべて相当であつて、原判決には所論の違法はなく、論旨は理由がない。

同第二について。

被上告上の上告人に対する所論本件土地の明渡請求事件における被上告人敗訴の確定判決理由中の、被上告人は上告人に対し右土地所有権を主張し得ない旨の判断については、既判力は生じないとした原判決の判断は正当である。従つて、右訴訟に本件土地の所有権確認を求める請求の趣旨が含まれているとして右確定判決の既判力は右所有権の存否についても及ぶ旨の所論は採用できない。原判決には所論の違法はなく、論旨は理由がない。

同第三について。

訴外上村吉三郎は同人より訴外上村菊次郎に対する本件土地の所有権移転登記手続請求事件の勝訴判決の仮執行の宣言に基づいて、右判決確定前の昭和三〇年二月一八日本件土地につき所有権移転の登記を経たもので、右登記が違法であることは、所論のとおりであるけれども、右訴外上村吉三郎の訴外上村菊次郎に対する前記所有権移転登記手続請求の勝訴判決はその直後同年同月二四日確定したというのであるから、登記義務者たる訴外上村菊次郎の登記権利者たる訴外上村吉三郎に対する登記申請の意思は、右判決の確定により表示されたこととなり、結局右の登記は、登記義務者の意思に合致するに至り、右登記の違法は治癒され、有効な所有権移転登記が右上村吉三郎のためになされたものと解するのを相当とする。してみれば、右上村吉三郎より更に本件土地の所有権移転を受けその旨の登記を経た被上告人は右所有権移転を上告人に対抗し得るとした原判決の判断は正当であつて、原判決には何ら所論の違法はない。論旨は理由がない。

よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。(岩田誠 入江俊郎 長部謹吾 松田二郎)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例